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特別受益の詳しい説明(3)

特別受益になるかどうかの判断基準

特別受益となるには一般的に次の二つの要件が証拠により証明されることが必要です。

  1. 贈与が行われたこと
  2. それが婚姻、養子縁組、生計の資本のためであったこと

贈与が行われたことについて争いがある場合は、被相続人の預金の取引履歴などで贈与の金額とその時期を確認することになります。高額の金銭が預金の記録上一度に移動している場合は比較的分かりやすいですが、少額の金銭が長期間、継続的に移動している場合は被相続人によって生活費なとに消費されたものもありうるので,どの部分が特別受益の贈与になるのかというとても難しい問題が発生してきます。とても証明が困難です。

贈与の趣旨が、婚姻・養子縁組・生計の資本であったことも認められないと特別受益にはなりません。この点に関しては、その贈与か遺産の前渡しという意味を持つかどうかという点が判断のうえで大きな意味を持ちます。

この二つの要件を満たした場合は、次に持戻し免除の意思表示の有無が問題になります。持戻しの意思が明確に書面で残っていない場合には間接的な事実から黙示の意思表示を推認できるかどうかということになります。この点は903条に4項が追加されたので、20年以上の夫婦間での居住用建物・敷地の贈与の場合には持ち戻し免除の意思表示を推定する規定ができました。

代襲相続と特別受益

被相続人には配偶者Aと子供BとCがいたけれども、被相続人が亡くなるより前に子Bは亡くなっており、Bの子D(被相続人の孫)が代襲相続人であるとします。

Bが生前に特別受益を受けていた場合、Bの子であるDは持戻しの義務を負うか

代襲者Dが被代襲者Bが生きていたときよりも有利な地位になる理由はないので、この場合、Dは持戻しの義務を負うとされています。

反対にBではなく代襲相続人であるD(孫)が特別受益となるような生前贈与を受けていた場合はどうか

この場合は両説あります。

通説は、代襲原因が発生する前の代襲者の特別受益は持戻しの対象にならないとしています。つまり、通説によればBが死亡する前にDが贈与を受けていた場合は持戻しする必要はない、B死亡後にDが贈与を受けた場合は持戻しするということになります。

反対説は、被相続人から贈与を受けた時期は関係なく、相続開始時に共同相続人であれば持戻し義務があるとするものです。判例がない論点では通説が有力となります。

生前贈与を受けた人が、その後に相続人の資格を取得した場合はどうなるか

たとえば、贈与を受けたときは被相続人と内縁関係だったけれども後に結婚した場合や養子縁組をした場合などが考えられます。
この場合は、相続開始時に相続人であれば持戻しの対象になるという説が支配的です。

相続人自身ではなく相続人の配偶者や子が贈与を受けた場合

たとえば、被相続人が子の妻や孫に贈与した場合のことです。

これは相続人に対する贈与ではない以上、特別受益として持戻しの対象にはならないのが原則です。
ただし、相続人の配偶者や子に対する贈与というが仮装にすぎず、真実は相続人に対する贈与である場合は持戻しの対象になることがあります。
裁判所の審判では、遺産の半分以上の価値ある農地を子の配偶者名義に贈与し、その贈与の趣旨は農業を手伝ってくれたことに対する謝礼の趣旨が含まれ、農業を手伝っていたのは子であった場合に、持戻しを認めた例があります。実質的に相続人に対する遺産の前渡しの趣旨の贈与と判断されたのでしょう。

特別受益となる贈与の基準時は?

生前贈与を受けたのが何年も前のことだと、贈与を受けた物の価値が相続のときとは違っています。そういう場合は、相続開始時の評価を基準とします。

贈与を受けた家が地震で全壊してしまったとき

この様に贈与を受けた財産が不可抗力で滅失してしまったときは特別受益はないものとされます。
全壊まではいかず半壊したようなときは、相続開始時の下がってしまった価値で評価されます。
しかし、贈与を受けた人の行為によって贈与を受けた物が滅失した場合は、相続開始時にそのまま存在したとみなして評価します。建物の贈与を受けた人が、その建物を売ってしまった、火事を出して焼失させてしまった場合などがこれに当たります。

物価変動を考慮するか

贈与を受けたものが金銭であった場合は、消費者物価指数を参考にして貨幣価値の変動を考慮することになります。それは昭和30年代の100万円と現在の100万円では実質的な価値が違いますので、それを考慮に入れるということです。
金銭ではない物の贈与の場合は、貨幣価値の変動は考慮されません。

持戻し免除の意思表示

被相続人が贈与しただけでなく、その持戻しを免除する意思を表示していたときはその意思が尊重されます。
持戻し免除の意思表示の方式は決まっていませんので、必ずしも書面ではなく口頭でも可能です。ただし、口頭で持戻し免除をしたとしてもその証明が困難なので紛争になります。持戻し免除の意思表示は、明示、黙示を問いません。したがって、「持戻し免除する。」と明示してもいいし、贈与の方法や内容などから持戻し免除の意思表示が判明するという場合もあります。
ただし、遺贈が特別受益になるの場合は、遺贈が遺言という要式行為で行われるので、持戻し免除の意思表示も遺言で行われる必要があるというのが多数説となっています。

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弁護士 安田英二郎

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